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甲状腺の病気が女性に多い理由
女性に甲状腺の病気が多い理由については、まだ十分にはわかっていません。ただバセドウ病や橋本病は、次に述べるように、自己免疫が関係して起こる病気であるといわれています。そして、女性に自己免疫疾患が多いことから、これらの病気が女性に多いと一般的に考えられています。
自己免疫疾患
少し難しくなりますが、自己免疫について説明しましょう。正常な場合には、身体に外からウイルスや細菌のような異物(抗原)が入ってくると、このような異物から身体を守るために抗体ができ、次に同種の異物が入ってきたときに、抗体がこれを攻撃して抑える免疫の働きをします。例えば一度「はしか」にかかると、抗体ができ、その後は「はしか」にかかることは少なくなります。まだ十分に解明しつくされてはいないのですが、この免疫のしくみが、通常の外から入った異物に対してのみならず、自分の身体の組織の一部に対しても、これを外からの異物と誤認して抗体を作ってしまうことがあります。これを自己免疫といいます。そして、この抗体が自分の身体に対して攻撃的に作用して、いろいろな障害を引き起こします。この自己免疫によって起こる病気のことを自己免疫疾患と呼んでいます。バセドウ病や橋本病は代表的なこの自己免疫疾患なのです。
甲状腺について
1)甲状腺の位置と甲状腫瘍
甲状腺は頸の真ん中よりやや下、のどぼとけのすぐ下のところにあります。丁度、蝶が羽をひろげたような形で、頸の前の正中線の両側にまたがっています。甲状腺の異常がなくて正常な場合には、外からはほとんどわからないのですが、甲状腺の病気になると腫れて大きくなり、外からもわかるようになります。これは甲状腺が腫れて甲状腫瘍ができているからです。甲状腫瘍は人によりその形や大きさは多様ですが、注意深く観察すれば自分で甲状腺の腫れを見つけることが出来ると思います。鏡を見ながら、あごを上げて、つばを飲み込むしぐさをして、よく見てください。のどぼとけの下の部分に蝶が羽をひろげたような形をした塊が上下に動くようであれば、甲状腺が腫れているといえます。甲状腺が腫れている場合には、他に別の症状がみられなくても、医師の診断を受けたほうがよいでしょう。
2)甲状腺ホルモン
甲状腺ホルモンは主として身体の新陳代謝を司っています。甲状腺ホルモンの分泌は、まず脳の視床下部から分泌される甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の分泌によって、脳下垂体が刺激されて、脳下垂体からさらに甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌され、それがさらに甲状腺に作用して、甲状腺ホルモン(T3、T4)が分泌され、身体の新陳代謝を調節しています。また甲状腺ホルモンの分泌が多すぎると、この情報が視床下部と脳下垂体に伝わりTSHの分泌を抑え、またさらに甲状腺ホルモンの分泌を抑えるというように、視床下部、脳下垂体、甲状腺の三者がお互いに協調しながらホルモンの分泌を自動制御し、身体の新陳代謝を巧みに調節しているのです。
3)甲状腺機能亢進症と甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの分泌が多すぎると、身体の新陳代謝が活発になり過ぎ、甲状腺機能亢進症になります。そして甲状腺機能亢進症は、バセドウ病によっておこることが非常に多いのです。逆に甲状腺ホルモンの分泌が少なくなり過ぎると、身体の新陳代謝がにぶり、甲状腺機能低下症になります。そして甲状腺機能低下症は、橋本病によっておこることが非常に多いのです。